1 婚姻制度窓口の「どうしたらいいの?」事例集 259相談者や当事者などの立場を尊重しながらも,法に則った結論を導き出し,更に納得してもらえる説明ができなくてはなりません。 人としての「情」は,時には判断を誤らせる場合がありますから,まず正しい判断を導き出してから,その導き出した結果を相談者に心を込めて伝えることにしましょう。とても難しいことですが,これが窓口の鉄則です。 本事例の窓口対応をするにあたっては,担当者自身が,そもそも婚姻制度とは何かを理解し,成年後見人の役割などの関連する事項を確認した上で,相談者の意向をくみ取りながら説明しなければなりません。 婚姻とは,「一男一女が合意によって終生の共同生活を目的とした法律上の夫婦関係を創設すること」(髙妻新著『最新 体系・戸籍用語辞典』),また「婚姻によってつくられる家庭が社会の基盤となり,ひいては,次の社会を担う子供の誕生ということにつながるところに,婚姻の意義がある」(髙妻新著『最新 体系・戸籍用語辞典』)とされています。 婚姻は,戸籍法の定めるところにより届け出る(婚姻届を提出し,受理される)ことによって効力が生じる創設的届出です(民739条,戸74条)。このことから,婚姻と戸籍制度とは切り離して考えることはできません。2 婚姻の実質的要件 婚姻の実質的要件は,以下のとおりです。① 婚姻しようとする者の間に意思の合致があること(民742条1号)② 婚姻年齢に達していること(民731条) 男性は18歳,女性は16歳で婚姻できます。これを婚姻適齢といいます。③ 重婚でないこと(民732条)④ 女性は前婚の解消または取消しの日から100日を経過していること(民733条1項) これを再婚禁止期間(または待婚期間)といいます。再婚禁止期間は,婚姻解消の日から数えます(民733条1項,平28・6・7民一585依命通知)。婚姻解消の日とは,協議離婚の場合は離婚届を出した日,死別の場合は配偶者死亡の日,裁判離婚の場合は調停成立の日,または審判・判決等の裁判が確定した日です。再婚禁止期間があるのは,離婚(死別)してすぐに結婚すると,子が出生した場合に嫡出推定が重なり,前夫または後夫の,どちらの夫の子なのかわからなくなる父未定の子が出生する場合があるからです。ただし,婚姻解消時に女性が懐胎していなかった場合,前婚解消後に出産した場合には,この期間を待たずに婚姻できるとされています(医師が作成した「民法第733条第2項に該当する旨の証明書」を添付する。民733条2項,平28・6・7民一584通達)。※ 平成30年法律第59号(令和4年4月1日施行)の民法一部改正により,婚姻適齢は男女ともに18歳になります。
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