補訂版 戸籍の窓口IV 婚姻・離婚・婚氏続称・親権(管理権)・未成年後見
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はしがき  iii 戸籍の届書は,人の人生と同じ数だけあります。私たちは,それらの届書が提出されるたびに,確実で,しかも迅速な判断を迫られます。戸籍の窓口はそんなところです。戸籍実務には知識と経験が必要であることは言うまでもありません。しかし,最近は人事異動のサイクルが早くなり,10年以上戸籍事務を担当した,いわゆるベテラン職員が少なくなりました。そんな状況の中で,新しく戸籍事務を担当した人は,常に不安を抱えながら窓口に座っています。そして窓口を訪れるお客様は,新任,ベテランの区別なく,窓口担当者を信頼して届出あるいは相談をされるのです。 「初めて窓口に座ったときに震えました」「どんなに勉強しても難しくてため息が出ます」そんな声を耳にするたびに,私は,初任者の方たちの不安を解消できる方法はないか,また,たとえ経験が浅い人でも,確認漏れがない確実な審査をする方法はないかを必死で考えました。そして私は,ある結論にたどり着いたのです。それは審査要件を網羅し,その要件をフローチャートにし,YES・NOで答えていくと確実な届書の形にたどりつくというものでした。確実な届書の形にたどりつけば,初めて戸籍の窓口に座った人でも,確認漏れがなく,迅速に,届書の審査ができると考えましたが,それを実現するには,幾多の困難を乗り越える必要がありました。 8年ほど前になりますが,ある法務局の方に,そのアイデアを話したことがあります。その方からは「それはとても難しいことだなぁ。残念ながら不可能かもしれないね」という答えが返ってきました。その方にとって,戸籍は神聖なものであり,戸籍を知り尽くしている方であるからこそ,届書の形が限りなく無数にあり,そして,すべての審査には,培った知識と経験が必要であることがわかっていたからです。「果たしてそんな夢のようなものができるのか」「作ったとしても間違った判断をしてしまうようなものであれば,作らない方が良い」「たとえ届書の形がわかっても,その根拠,趣旨を身に付けることができるのだろうか」私は自問自答しながら,実現は非常に難しいとわかっていても,あきらめることはできませんでした。私の挑戦は,このような自問自答から始まったのです。 初めは手書きで届書見本を作成し,次は各種届書のフォームを作成し,届書の要所に注意を促す吹き出しを入れました。そしてその届書に解説を付し,さらにその記載例を作成しました。どの届書を見てもその基本のかたちと留意点の解説が目に触れるように,何度も繰り返し解説し,届書の各欄の法的根拠を示し,さらに戸籍の変動図を付け加えました。このように試行錯誤を繰り返して完成した「戸籍の窓口~フローチャートでわかる届書の審査~」は,8年間の私の夢の結実です。どうぞ皆さん,震えないで,ため息をつかないで,堂々と窓口に出てください。神聖な戸籍実務であるからこそ,確実な届書の審査をし,届書が提出されるたびに根拠と趣旨を繰り返し学び,知識を身に付けはしがき

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