不書2
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第4章 建物の表示に関する登記2存在スルニ至ルヲ以テ足レリトシ床及天井ノ如キハ未タ之ヲ具ヘサルモ可ナリ」(大審院判昭和10・10・1大民集14巻1671頁)としていることから、少なくとも、通常の木造建物については屋根及び周壁を有することが、建物としての最低要件であるとされていると解される。 ただし、屋根及び周壁又はこれに類するものを有していても、その造作が簡略であったり、材料の耐久性が脆弱なものは、建物の構造上の永続性が乏しいと考えられることから、温室と類似し、構造は軽量鉄骨造であるものの、屋根及び壁の仕上げが、耐用年数が概ね1年程度のビニールハウスについては、建物とは認められないとされている(昭和36・11・16民事甲第2868号民事局長回答、同日民事三発第1023号第三課長回答)。 他方で、屋根及び周壁は、他の工作物の構造を利用しているものでも差し支えないと解されていることから、ガード下を利用して築造した店舗、倉庫等の建造物(準則77条1号ウ)、地下停車場、地下駐車場又は地下街の建造物(同号エ)は、建物として取り扱うものとされている。① 屋根について 「一般に屋根とは、雨露などを防ぐために建物の上部に設けられた覆いをいうものと理解されており、少なくとも屋根というためには雨覆の機能を果たすことがその最低限の要請であるというべきである。」(広島地判平成4・3・31判時1453号121頁)とされており、屋根を有することは、建物の認定において不可欠な要件と解されている。また、周壁のような「これらに類するもの」を認めていないことから、屋根を有しないような建造物については、たとえ建築技術が進歩し、建物に対する需要が多様化したとしても、建物として認定することはできないものと考えられる。 登記実務においては、停車場の乗降場又は荷物積卸場は、上屋を有する部分に限って建物として取り扱い(準則77条1号ア)、野球場又は競馬場の観覧席も、屋根を有する部分に限って建物として取り扱うものとされている(同号イ)。

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