第1節 建物の意義 また、従来、登記実務における屋根は、固定的なものが一般的と考えられていたが、「福岡ドーム」と称される可動式屋根を有する建物について、当該建物は、全天候型の野球場としてだけでなく、各種球技やコンサートなどのあらゆる催し物の会場として、気象条件に左右されることなく予定どおり実施するための設備を備えたいわゆる全天候型アリーナであることから、悪天候時には、屋根を閉じることが当然に想定されており、そのような利用形態、構造、材質、耐久性等から判断した場合、当該開閉式屋根については、開閉(可動)式であってもその用途性に応じて、いつでも屋根としての機能を果たし得ることから、開閉可能部分をも含めて全体として、当該建物には屋根があると認めるのが相当であり、したがって、可動式の屋根の直下の部分の面積も床面積に参入すべきであるとされている(平成5・12・3民三第7499号第三課長回答)。② 周壁について 一般的に、どの程度の周壁又はこれに類するものを有すれば外気分断性があるといえるかについて、登記実務においては、アーケード付街路(公衆用道路上に屋根覆を施した部分)は建物として取り扱わないとし(準則77条2号エ)、また、ガソリンスタンドに付随し、給油の目的をもって駐車に利用できる、きのこ型(中央に1本の柱を有し、円い屋根のみ存在する)の建造物は、建物として取り扱わないのが相当であるとされている(昭和36・9・12民事甲第2208号民事局長回答)。すなわち、これらの建造物については、周壁を欠くことから外気分断性を有しないとして、その登記能力が認められていないとされたものと考えられる。また、建物の床面積は、壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積により定めると規定されている(規則115条)ことから、建物が、すべて周壁を有することを前提として、登記の事務処理が行われているといえる。 それでは、どの程度の周壁又はそれに類するものがあれば外気分断性を有するといえるかについて、一般の住宅等にあっては、基本的には、周囲のすべてに壁又はそれに類するものを必要とすると解3
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