第2 抵当権の性質、効力、順位及び優先弁済権等的不動産について、債権者が抵当権を実行し、金銭に換えて、債権の満足を得ることを容認するという限度において、債務について責任を負う。すなわち、物上保証人の責任は、担保に提供した不動産の価値の範囲にとどまる(物上保証人の一般財産にまで及ばない。)。したがって、債権者は、物上保証人が提供した目的不動産について抵当権を実行することができるだけであり、物上保証人の抵当不動産以外の一般財産により、債務者の債務を弁済するよう請求することはできない。 上記のとおり、物上保証人は債権者から債務の弁済を求められることはないが、自ら進んで債務者の債務を弁済することは差し支えない。そして、物上保証人が自ら債務を弁済したときは、保証人が保証債務を弁済したのと同様の関係が生じ、また、同じ関係は、物上保証人が債務を弁済せずに、目的不動産の抵当権が実行され、これが売却された場合にも生ずる。 そこで、民法は、質権を設定した物上保証人について、保証の規定に従って債務者に対し求償すること(出費の償還をしてもらうこと)を認めた上(民351条、459条以下)で、民法351条の規定を抵当権についても準用することとしている(民372条)。これが、抵当権の設定者が物上保証人である場合の求償権といわれるものであり、物上保証の負担が付いている不動産を取得した第三者(第三取得者)が、債権者に債務を弁済した場合にも、同様の求償権が認められている(最二小判昭和42・9・29民集21巻7号2034頁)。 抵当権者は、被担保債権(担保権によって担保される債権)の一部について弁済を受けても、残りの部分の満足を得るために、抵当権の目的物全体について、抵当権を実行することができるのであって、抵当権の及ぶ範囲が、残る債権額の範囲に縮減されることはない。これを、51 抵当権の性質⑴ 不可分性⑶ 物上保証人と債務者との関係第2 抵当権の性質、効力、順位及び優先弁済権等
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